tatsumitatsu

ロードバイクとキャンプ中心のブログです。

回顧録 ~本を読み出したきっかけ

最近こそロードバイクやキャンプなど、アウトドアにめっきりハマっているが、若い頃は本当にインドアであった。というか趣味らしいものがなく、マンガやTVゲームばかりしている嘆かわしい若造であった。そんな中、人様にかろうじて言える趣味、それが読書であった。
f:id:tatsumitatsu:20210730082409j:image

 

本格的に本を読み出したのは、中学生の頃だ。きっかけは忘れた。たぶん学校の図書室にあった、青少年向けのSF小説だろうか。記憶に残っている作品は、タイトルは忘れたが、ものすごく大きな昆虫が生息する、とある惑星で必死に生きる人間のお話。あともう一つは『遊星からの物体X』だ。これも読んですぐにタイトルは忘れてしまっていたのだが、ずいぶん後になってたまたま映画を見て、「なんかこのストーリー知ってるぞ」と。そこから本のタイトルを思い出した次第である。この2冊はめっぽう面白かった。自分にこんな活字の本を読む力があったのかと、驚かされるくらい没頭した。

あと、忘れられないのは、中学2年の時の夏休み。母方の実家が徳島県の田舎にあるのだが、そこに数日滞在することになり、きっと退屈するからと、道中本屋に立ち寄った。私が、キン肉マンのマンガの何巻を買おうかとウンウン悩んでいると、業を煮やした父親がこれでも読んどけと、司馬遼太郎の『龍馬がゆく』の1、2巻を勝手に買って私に押し付けてきた。なんだこの最高につまらなそうな本は、と思ったが、これがハマった。

母の実家はそれはもう田舎で、入口には土間があり、トイレは外、風呂も外、しかも五右衛門風呂。薪を使って湯を沸かし、灰はかき集めて隣の畑にパラパラまく。今からすると何とも羨ましい里山ライフだった訳だが、都会育ちの中学生(私)にはその価値はわからず、ありあまる時間と『龍馬がゆく』だけがあった。四方の障子を開け放した畳の間の中央にごろんと寝転び、ただ『龍馬がゆく』だけを読む。思い起こすと何とも牧歌的で幸福なひとときであった。

 

割りと意識して本を読み出したのは、この時からだと思う。太宰治は面白かった。芥川龍之介はつまらなかった。井上靖の大陸ものにハマった。夏目漱石の『こころ』は面白かったが『坊っちゃん』はつまらなかった。当時の私の嗜好はこんな感じである。我ながら何ともほほえましい。だから宮沢賢治もダメであった。

上でダメ出しした作品に価値を見いだすには、まだもう少しの読書経験が必要であった。が、とにかく日本の文学史を飾る有名作品ばかりにアタックした当時の自分には感心である。たまに『宇宙皇子』とか『オーラバトラー戦記』とか、今でいうライトノベルっぽいものにも手を出したがのめり込めなかった。今の自分の価値観や仕事選びに決定的に影響しているのは、前者の純文学たちである。