2021年12月26日(日)
先週、ロードバイクで十三峠を登れたので、あわよくばと希望を抱いて暗峠(くらがりとうげ)に挑戦して来た。結果は惨敗。しかしヒルクライムが無理でも、別の楽しみ方もできる。その顛末をレポートする。
〈いざ暗峠へ〉
朝7:45自宅発。1時間ほどで、東大阪市の枚岡神社の北側にある交差点に到着。暗峠越えのルートは、上の写真の一方通行禁止の標識があるところから始まる。周知だが、国道308号である。
おさらいまでに、十三峠との斜度比較。
・十三峠:平均斜度9.2% 最高斜度14.7%
・暗峠:平均斜度17.1% 最高斜度31%
※ともに大阪側。
あまりに違い過ぎる…。十三峠に登れたくらいで、なぜイケると踏んだのか。おこがましいにも程があるのだが、まあ何事もやってみないと分からないから。
ということでスタートした。なお峠までは約2.3kmの道のり。短い。根性出せば何とかなるか?
しかしである。住宅街を抜け、山中に入ってすぐの所で撃沈。キツすぎる…。目の前に案内板。峠まで1.9kmとある。スタートして400mくらいか。何とも情けない。
まあ身の丈を知るにはちょうど良かった。諦めて、早々に山登りにチェンジする。
ふと目を前にやると松尾芭蕉の句碑がある。
菊の香にくらがり登る節句かな
芭蕉、最期の旅路でここを通り詠んだ句とのこと。句碑は達筆過ぎて読めないけど。
自転車を押して歩くと、逆に周囲が良く見える。この峠道は暗越奈良街道と呼ばれ、奈良時代以前から使われてきたという歴史ある古道だ。堪能させてもらおう。
禊行場とある。
朱の鳥居が映える名もなき神社。お玉大神など聞き慣れない神様を多数お祀りしている。
道を挟んだ所に、不動明王像。
それにしても急勾配が途切れない。たくさん史跡があって気が紛れるので、心は折れてないのだが、これだけ急だと自転車でこぎ出せない。どんどん歩く。
えげつない勾配。
そして有名な最高斜度のヘアピン。これを足を着かずに登れる人がいるとは。
ヘアピンを過ぎて少し行くと勾配が緩む。自転車に再びまたがる。ゴールはもうすぐのはず。
弘法の水。今も清水が出ているが、そのままでは飲んだらいかんと。
只今0℃。でもまったく寒くない。さすがワークマンのイージス。
ちなみにこんな服です(笑)
矢田山出迎(やたやまでむかえ)地蔵尊。この辺りから集落が始まる。
やがて有名な石畳の道に。かなり凸凹なので自転車を降りて歩く。
まもなく暗峠に到着!
風情のある町並みだ。
左のクリーム色の建物が、有名な峠の茶屋 すえひろ。年末だからだろうか、お休みのようだった。
さて、帰ろう。他のサイトでは、下りもデンジャラスだと紹介されていたが、スピードを出さなければまったく問題ない。
登りでは気づかなかったが、木々の隙間から素晴らしい河内平野の絶景が見える。
〈暗峠まとめ〉
暗峠は噂通り破格の斜度であった。私の体力では、自転車で登ることは今後も不可能だと思われる。ただ、見方を変えて“古道歩き”だと捉えると、また来てもいいなと思える風情があった。
なんせ距離が短いのがいい。この距離なら自転車を押して登っても疲れない。下りも思ったほど危険なことはなかった(他のサイトでキャリパーでどうやって降りるんだといった書き込みがあってビビっていたが、普通に降りれます)。
もし暗峠に必要以上に怖いイメージを持って登るのを躊躇している人がいれば、恐れずに行って見ればいいと思う。
自転車を押して登るのは、この坂においては恥ではない(現に私以外にも押して登っている人がいた)。逆に、古道の風情や、道中にある史跡を楽しむために、ぜひ地面に足を着けて歩いてほしいと思うくらいである。
そもそも私が暗峠を知ったきっかけは、情緒ある歴史街道としてだ。名前がかなり独特、というかダークなイメージなので余計に記憶に残りやすい。いつか行ってみたいと思ううちに年月が過ぎ、ロードバイクに乗るようになり、激坂ナンバーワンという情報に触れて興味が増し、今日に至る次第である。
今回登ってみて、この峠道は激坂だけでなく、歴史情緒的にも他の峠道とは一味違うと感じた。ハイカーが多いのもうなずける。自転車乗りの視点、つまり勾配のキツさだけで、この峠を敬遠するのはあまりにもったいないと思う。
〈ポタリングは続く〉
暗峠から大阪側への下り。そのまま降りきってはつまらないので、途中枚岡神社へのショートカットと思われる道にそれる。
少しだけ階段があるので自転車を担いて降りると、姥が池という池に。小さな池だが、可哀想なお婆さんの身投げ伝説がある。しんみりする。
さらに進むと、いきなり枚岡神社の参道広場に出る。
うわ、ビックリした。ショートカットし過ぎ。二の鳥居もくぐらず境内の中心に来てしまった。恐縮して下乗し早々に退散する。でも写真だけは撮る(笑)
まだ東高野街道には降りず、生駒・信貴山麓の斜面に造られた住宅街を南に走る。
途中、立派な社が。梶無神社というらしい。瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)と木花咲耶姫(このはなのさくやびめ)の夫婦神を祀る。小さいながら美しい神社だ。
さらに南下。
美しい山並みだ。生駒・信貴山麓は本当に素晴らしい。
王祖神社(たまのおやじんじゃ)。先週、十三峠に登った帰り、スルーしてしまったのが心残りであった。立ち寄る。
ものすごい斜面に、ものすごい大楠がそびえる。圧倒される。
拝殿。奥にある本殿も見事な作りである。祭神は櫛明玉命(くしあかるたまのみこと)。玉造部の祖神。三種の神器の一つである八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を造った神である。この地では宝玉作りが盛んであったのだろうか。
摂末社もそうそうたるものだ。境内の建造物はなかなかの年季の入りようで、痛みが激しいが、逆に歴史が感じられて良い。
神の使いである長鳴鶏が放し飼いになっている。良く鳴く。ワイルドな雰囲気、原初の神社の雰囲気(よく知らんけど)が境内全体に漂う。これまでに詣ってきた神社の中でも抜群に好みである。
そしてこの絶景。もう何も言うことはない。
私は偏屈なので、本当に心に感じるものがないと手を合わさない困った人間なのだが、ここではもう手を合わせまくりであった。心が豊かになって、帰路につく。
瓜破霊園横の公園で小休止。手袋を外すと、気温の低さが実感できる。手がみるみる凍える。持参していたクリームパンが、冷蔵庫で冷やしたシュークリームみたいになっている(笑)
14時頃帰宅。本日のトータル走行距離63km。長年の夢であった暗峠に登ることができ、記念すべきライドとなった。
さて今年も一週間を切った。たぶん残りの余暇は大掃除に費やされるのであろう。隙きを見て、もうひとっ走りしたいところだが。