2021年11月7日
大阪と和歌山の府県境、蔵王峠と鍋谷峠をロードバイクでハシゴした。この2つの峠を結ぶ最短ルートは恐ろしい山登りコースだったが、まあ無事に帰ってこれたので良しとする。以下、その一部始終を書き留めておく。
〈滝畑ダムでタイヤレバー回収〉
まずは紅葉が美しい滝畑ダムへ。自宅から20kmくらい。
先週、光滝寺キャンプ場でソロキャンをした際、滝畑ダム湖畔でパンク修理したのたが、タイヤレバーを置き忘れてしまったのだ。あんなプラスチックの棒、誰も拾わないだろう。残っていないか調べに行った。
あった! 無くしたのは3本だが、2本だけ見つかった。2本あれば十分。良かった〜
気分を良くして蔵王峠を目指す。府道61号(堺かつらぎ線)をひたすら登っていく。
ダムから光滝寺キャンプ場までは、キツい坂はない。景色も美しい。
カーブに設置されたミラーで自撮り(笑)
光滝寺キャンプ場の入口。本日は峠を目指すので、左の道へ。リング状の溝がたくさん彫られたコンクリート舗装は、急坂によくある施工だ。
蔵王峠までの大阪側の道は酷道と評判だが、私的にはそんなことはない。自然が身近に感じられ、数ある(大阪〜奈良・和歌山間の)峠道の中でもトップクラスに気持ちが良かった。まあ季節も良かったのだが。
キャンプ場を過ぎてすぐの所に、上のようなひどい道もあるが、100mと続かないので大丈夫。
キャンプ場から蔵王峠までは、激坂と言えるのは4か所くらいか。いずれも間隔は短いので苦ではない。
峠に着くと、道が分岐している。左が峠を下る道、つまり府道61号の続き。右が堀越観音へ行く道…って何だこれは? ナビを調べると麓へは下りず、山中を西方へ走り鍋谷峠まで続いているようだ。
蔵王峠の標識は分岐を左に入ってすぐの所にある。
それにしても、2つの峠を結ぶ謎の道が気になる。下図の赤線のルートだ。アドベンチャーな予感がする。行く。
〈蔵王峠から鍋谷峠へ〉
まずは蔵王峠から堀越観音を目指す。
道はしっかり舗装されている。いきなりの激坂だがまだ踏ん張れる。途中、葛城二十八宿第十三経塚というのがあったので寄り道。
これは自転車で行けない。途中で乗り捨て、歩いて登る。
着いた。葛城二十八宿第十三経塚。大日如来と刻まれた石碑がある。これだけ?と拍子抜けしたが、葛城二十八宿とは、役行者が法華経八巻二十八品を埋納した二十八の経塚で、加太友ヶ島からスタートし、犬鳴山、牛滝山、金剛山などそうそうたる霊場を経て、亀の瀬に至る葛城修験の壮大な修行の道だ。その一つがこんな僻地にあるのかと思うと、そして自分が偶然にも訪れたと思うと、少なくない感動があった。
参考∶葛城修験(柏原市HP)
誰もいない。こんな所に来るはずがない。とても素晴らしい。家からくすねてきた菓子パンとミカンを食す。食料が尽きた。もっと持ってくれば良かった。
ロードに戻り、大変な坂道を経て(ちょっと降りて押しました)、堀越観音に到着。
正式名は堀越癪観音。癪の病に霊験あらたかとのこと。
役行者の像。
天然記念物のサザンカが咲いていた。何という幸運。
絶景。標高は605mらしい。こんな山奥に人の営みがあるとは。しかし、寺の縁起を調べると、根来寺の兵火で一度燃えているらしい。戦争はこんな僻地にも及ぶのだ。土地の人の悲しみやいかばかりか。戦国武将などは私も好きだが、実際はえげつない時代だったんだろうな。
しみじみ小休止。
車で来たらしい老夫婦に、こんな所まで自転車で登って来たのか、と驚かれた。はい、物好きなもので(笑)
さて、鍋谷峠を目指してさらに西へ。
素晴らしい景色。天空を舞っているようだ(大げさ)。そしてものすごく長い下り坂。嫌な予感がする。下りあれば、登りありだ…。
かなり降りきったところで、分岐に出くわす。
デマンドタクシーの標識が目印。ここが三叉路になっている。来た道からここで右折すれば、すぐに文蔵の滝がある。
入口。駐車場があり、ここからは徒歩で入っていく。
秘境感が半端ない。
岩に閉ざされた空間に滝が落ちている。神秘的な光景だ。今も修験の滝行に使われているのだそう。私の他に先客がいて、すごいカメラ機材で撮影されていた。
文蔵の滝からは、もう上を見るのも嫌なくらいの激坂がはるか彼方まで続いている。黙々と自転車を押して登る。
綺麗な紅葉。くるみ谷もみじ公園というらしい。ここで一瞬だけ勾配が緩くなる。串柿の里の看板がある。何だろ?
しばらく行くと急に人気が出てくる。
串柿とはこれか! 吊るされた柿が玉すだれとなってとても綺麗だ。スマホで調べると、この辺りは四郷の平地区というらしい。けっこうな観光スポットのようだ。というか食べたい…。渋柿でも何でもいい。体力が心もとなくなっている。
定福寺。屋根が個性的。
すぐ隣に八坂神社。
立派な千木。祭神はスサノオ様だ。またか!(罰当たり)
一帯は串柿だらけ。でも眺めるだけ(泣)
平の集落を抜けると、山中に入る。ここからが地獄の始まりだ。
完全な山登りの道。いや、普通の登山ルートであれば、九十九折にするなどして勾配を和らげるはずだ。が、この道はひたすら真っ直ぐに斜面を登る。もう最初からお手上げで、自転車を押して登り始める。
意識も朦朧としてくる。この坂はいつ終わるのだろう? この先はどこに続いているのだろう? いや、鍋谷峠を目指してるのだが…。
上り坂の終わり。また三叉路だ。標高は780mくらい。右に行くと、七越峠を経て三国山(標高885m)だと。和泉葛城山より高いし。絶対無理。
という訳で左の道へ。あとは鍋谷峠まで下り坂だ。
苔むした壁が美しかったので速度を落とし停車する。その瞬間、一台の自転車が私を追い抜き、降って行った。彼はどこから走って来たのだろう!? このルートをすでに知っていて走っているのなら、スゴい人だ。私はもう二度と走りたくない(笑)
程なく鍋谷峠に到着。いや、辛いロードだった。こんなに疲れたのは初めてだ。
鍋谷峠からは旧道を大阪方面に向かって下る。舗装されたばかりの道で快適だ。
峠道を下り切って平地に出ると、もはやこぐ体力が残されていないことに気づいた。気力ではなく体力切れ。まったくカロリーが欠乏しているのだ。
近くのコンビニに飛び込み、一番ゴージャスな弁当を買う。
デミグラスソースが自慢のハンバーグ弁当だ。イートインでむさぼり食う。
ここまであからさまなカロリー切れも初めての体験。体内でみるみるエネルギーに変わるのを実感する。元気を取り戻して無事に帰宅。
本日の走行距離 約83km。
本日の教訓、食料は多めに持っていくこと。
2つの峠を欲張ってハシゴして地獄を見たが、これまでにない非日常を体験できた。海外旅行などしなくても、知らない世界は身近にたくさんあるものである。